2026年6月8日に発生したフィリピン南部の地震(M7.8)に関する情報
出典:地質調査総合センター|2026年6月9日
2026年6月8日午前8時37分頃(日本時間)、フィリピン南部ミンダナオ島沖で マグニチュード (M) 7.8 の地震が発生しました (URL 1)。USGSの速報値によると、震源はミンダナオ島南端付近の Kablalanの南西約26 km、深さ 約55 km です(図1-2)。現地フィリピンでは、震源に近いミンダナオ島南部を中心に強い揺れが観測され、建物被害や停電などの影響が報道されています。人的被害についても死傷者の発生が報じられており、詳細な状況については現在も確認が進められています。一方、この地震に伴い、日本においても津波の可能性があるとして気象庁から津波注意報が発出されました。実際には、日本の沿岸の一部で20cmの津波が観測されましたが、これ以上津波が大きくならないと判断し、同日16時50分(日本時間)に同注意報は解除されました。
ミンダナオ島周辺は極めて複雑なプレート境界域に位置します。ミンダナオ島の東側にはフィリピン海プレートが西向きに沈み込むフィリピン海溝があり、ミンダナオ島の西側にはスンダプレートが東向き沈み込むコタバト海溝があります(図1-2)。2つの沈み込みプレートに挟まれたミンダナオ島はフィリピン変動帯(Philippine Mobile Belt)の一部を構成しており、大局的にはミンダナオ島は東西両側からのプレート収束運動による圧縮応力を受けていると考えられます。さらに、ミンダナオ島の東部にはルソン島から北西-南東方向に約1,200 km続く左横ずれ活断層であるフィリピン断層帯が走っています(図1-2)。
このように、ミンダナオ島周辺は複数の沈み込み帯や活断層が集中する複雑なテクトニクス環境にあるため、多様なタイプの地震の発生頻度が高い地域です。例えば、1976年にはスンダプレートがコタバト海溝に東向きに沈み込むプレート境界で1976年ミンダナオ地震(M 8.0)が発生しました。この時には、地震に伴って巨大な津波がミンダナオ島南西部のモロ湾で発生し、死者約8,000人の大きな被害が出ました(Soloviev and Kim, 1992)。また、2023年にミンダナオ島東部で発生した2023年ミンダナオ地震(M 7.6)は、フィリピン海プレートがフィリピン海溝に西向きに沈み込むプレート境界地震と考えられています。
今回の地震は震源の深さが約55 kmとやや深く、ミンダナオ島南端沖でフィリピン海プレートがスンダプレートの下へ西向きに沈み込むことに伴う複雑な変形帯の内部で発生した逆断層型地震と考えられています。そのため、1976年や2023年のようなプレート境界で発生した地震とは発生機構が異なる可能性があります。
*本図は、東・東南アジア地球科学計画調整委員会(CCOP)(https://www.gsj.jp/information/international/int-orgni/ccop-j.html)加盟各国の地質調査機関の協力により,国を超えた自然災害をもたらす地質ハザードについて関連諸国と議論するG-EVERプロジェクト(https://www.gsj.jp/information/international/int-orgni/gever.html)の活動で整備されたものです。
文献
- Soloviev, S.L., Go, C.N., Kim, K.S., 1992, Catalog of Tsunamis in the Pacific 1969¬–1982. Academy of Sciences of the USSR, Soviet Geophysical Committee, Moscow, 208 p.
- 宝田晋治・石川有三・丸山 正・吉見雅行・松本 弾・古川竜太・寺岡易司・Joel C. BANDIBAS・桑原保人・吾妻 崇・高田 亮・奥村公男・小泉尚嗣・佃 栄吉・Renato U SOLIDUM・Arturo S DAAG・Mabelline CAHULOGAN・Sri HIDAYATI・Supriyati ANDREASTUTI・Supartoyo・Xiaojun LI・Phuong Hong NGUYEN・Cheng-Horng LIN (2016) 東アジア地域地震火山災害情報図.地質調査総合センター.

宝田ほか(2016)に加筆

2026年6月8日に発生した地震の震央を赤色の星印で、
過去に周辺地域で発生した地震の震央をオレンジ色の星印で示した
宝田ほか(2016)に加筆
https://www.gsj.jp/hazards/earthquake/philippines2026/index.html

