政治・国際社会

韓国大統領が非常戒厳を宣布、…6時間で“解除” 軍撤収も混乱続く

韓国大統領が突然の「戒厳令」…6時間で“解除” 軍撤収も混乱続く(2024年12月4日)

2024年12月4日|NHK

韓国で一時「非常戒厳」野党はユン大統領に辞任要求

韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領は3日夜、来年の予算案に合意しない野党側の対応などを理由に一切の政治活動を禁じるなどした「非常戒厳を宣布する」と明らかにしました。

これを受けて、韓国の国会が非常戒厳を解除するよう要求する決議案を可決すると、ユン大統領はけさ早く再び会見して、閣議を通じて非常戒厳を解除すると発表し、韓国メディアは、閣議が開かれて非常戒厳は解除されたと伝えました。

最大野党はユン大統領に直ちに辞任するように要求し、応じなければ国会に弾劾を求める発議をする構えです。

韓国大統領が非常戒厳を宣言 その後「解除」

韓国のユン大統領は、3日夜、緊急の談話を発表し来年の予算案に合意しない野党側の対応などを理由に「非常戒厳」を宣言し、戒厳司令部が国会や地方議会での一切の政治活動を禁じることやすべてのメディアが統制を受けるなどとする「布告令」を発表しました。

韓国の国会は、4日未明に本会議を開き、非常戒厳の解除を要求する決議案を全会一致で可決すると、午前5時ごろ閣議が開かれて、非常戒厳は解除されました。

こうしたなか、韓国大統領府は首席秘書官などの高官らが一斉に辞意を表明したと明らかにし、現地メディアは、非常戒厳をめぐる一連の動きの影響だと伝えています。

最大野党「共に民主党」ユン大統領に辞任要求

一方、最大野党「共に民主党」は決議文を発表し、「ユン大統領の非常戒厳宣言は明白な憲法違反だ。これは内乱行為であり、完全に弾劾事由だ」と非難し、ユン大統領に直ちに辞任するように要求しました。

応じなければ、国会に弾劾を求める発議をする構えです。

国会議事堂の正門前には集まった市民がユン大統領の辞任を求めて抗議活動を行っていて、批判の声が強まっています。

非常戒厳の宣言から一夜明けてソウルの市民からは「軍事力で政治活動を統制しようとするなんてこんなことがありえるのか」とか、「大統領の弾劾も考えなければならない」と批判の声が相次ぎました。

「布告令」の内容は

戒厳司令官の陸軍大将名で出された「布告令」は「韓国の内部に暗躍している反国家勢力による体制転覆の脅威から、自由民主主義や国民の安全を守るため」として3日午後11時をもって韓国全域に6つの事項を布告するとしています。

1つめとして「国会と地方議会、政党の活動と政治的結社、集会、デモなどの一切の政治活動を禁じる」としています。

2つめに「自由民主主義体制を否定し転覆を企てる一切の行為やフェイクニュース世論の操作、虚偽の扇動を禁じる」。

3つめとして「すべての言論と出版は戒厳司令部の統制を受ける」としています。

4つめとして「社会の混乱を助長するストライキやサボタージュ、集会行為を禁じる」。

5つめには「ストライキ中だったり医療現場を離脱したりしたすべての医療関係者は、48時間以内に本業に復帰して忠実に勤務し、違反した時は戒厳法によって処罰する」としています。

最後に6つめとして「反国家勢力など体制転覆勢力を除く善良な一般国民は、日常生活での不便を最小化できるよう措置する」としています。

また「違反者に対しては、戒厳司令官の特別措置権によって令状なしに逮捕、拘禁、押収捜索ができ、戒厳法の罰則によって処罰する」としています。

国会周辺では警官隊が警備 市民とのもみ合いも

非常戒厳が宣布されたあと国会議事堂の周辺には多くの人が集まり、「大統領は辞めろ」などとシュプレヒコールをあげ、閉じられた門の前で警察ともみ合いになる場面もありました。

また、上空では一時、軍のものとみられる複数のヘリコプターが飛ぶ様子が見られました。

一方で、国会から少し離れた場所ではふだんと大きく変わった様子は見られず、人々や車が行き来していました。

ただ、韓国の通信社、連合ニュースは非常戒厳の宣布について「偽のニュースではないのか」とか「何が起こるかわからない」などと困惑する市民の声を伝えています。

また、連合ニュースによりますと4日も、通常どおり学校の授業が行われるということです。

石破首相「重大な関心を持って注視 万全を期す」

石破総理大臣は総理大臣官邸で記者団に対し「他国の内政について、あれこれ申し上げる立場にはないが、特段かつ重大な関心を持って注視している。在留邦人の安全については領事メールをただちに発出するなど、できるかぎりの対応をとっており、引き続き万全を期していく。現時点で邦人被害の報には接していない」と述べました。

米 ブリンケン国務長官「非常戒厳の解除を歓迎」

アメリカのブリンケン国務長官は3日、声明を発表し、「アメリカはこの24時間、韓国の情勢を注視してきた。ユン大統領が非常戒厳の解除を表明したことを歓迎する」としています。

そして「われわれは政治的な意見の不一致は法の支配に従い、平和的に解決されることを期待する。韓国国民への支持とともに、民主主義と法の支配という共通の原則を基盤とする米韓同盟への支持を改めて確認する」と強調しました。