健康・食・医療

アルゼンチン WHOを痛烈批判、脱退を表明

出典:JETRO(日本貿易振興機構)ビジネス短信

ミレイ大統領、WHO脱退決定を表明

ブエノスアイレス発

2025年02月07日

アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は2月5日、大統領執務室がプレスリリースを通じて世界保健機関(WHO)からの脱退を決定したことを明らかにした。脱退にあたっては議会承認が必要で、正式に脱退するまでには1年近くの時間を要するとみられている。

WHOからの脱退を決定した理由として、新型コロナ感染拡大時の対応において科学的根拠のない隔離を推進し、その結果、子供たちは学校に行けなくなり、何十万人もの労働者は収入を失い、企業が倒産に追い込まれ、さらには13万人の命が失われたことを挙げ、WHOの対応を強く批判した。そして、科学的根拠に寄らない対応に終始したのは政治的な影響によるものであり、各国の主権を制限するアプローチは、設立の目的に反しているとも述べた。

大統領執務室の発表に先立ち同日、マヌエル・アドルニ大統領府メディア・広報庁長官は、ミレイ大統領がWHOからの脱退をヘラルド・ウェルテイン外務・通商・宗務相に指示したことを明らかにした。また、アドルニ大統領府メディア・広報庁長官は、脱退の理由として、一部の国家からの政治的影響によるWHOの独立性の欠如であることを挙げた。そのうえで、WHOから直接の資金援助を受けているという事実もなく、脱退による医療の質の低下を招くことはないとした。

マリオ・ルゴーネス保健相も自身のSNSで、WHO脱退の決定は、国際機関が自国の健康問題に介入することを許さないためだと述べた。そのうえで、脱退後も引き続き汎米保健機関(PAHO)との協定は有効で、予防接種スケジュールは保証されており、疫学情報や低価格の医療物資へのアクセスも継続すると述べた。

しかし、国内ではさまざまな声が上がっている。2月6日付の現地紙「ラ・ナシオン」(電子版)は、「アルゼンチンが、世界保健政策、規制枠組み、国際保健規則、国際的に調整されたパンデミックへの備え、イノベーションから離れることを意味する」「健康面だけでなく、政治的にも戦略的にも誤った、扇動的かつ大衆迎合的な決定だ」「多国間組織への参加は、わが国の声を世界に届けることを可能にする」といった、脱退を懸念する複数の識者の意見を伝えている。